アンバランス日記

趣味について何か書くブログ

ライブに行けなかったかもしれない日の話

忘れもしない2018年6月8日金曜日の夕方、ある相談が私のもとに舞い込んできた。

先輩「この装置、来週の月曜に動かしたいんだけど土曜日に試運転できない?」

 

僕が部品交換を担当した装置だった。当時の僕は機械や装置などをメンテナンスする仕事に関わっており、実際に作業をするというよりは現場監督みたいな役割をしていた。

 

本当であればその装置の試運転は翌週に行う予定だった。だが色々あって他の作業との兼ね合いで早く使いたいらしい。どうしても無理であれば翌週の月曜でもよかったらしいが、なんとかできないかという依頼だった。無下にすることもできなかったので僕はこう答えた。

 

僕「施工業者さんのスケジュールが合えばいけると思いますよ。」

 

試運転は施工業者さんも一緒に立ち会うことになっていた。だが僕は土曜の試運転はないだろうと踏んでいた。

なぜなら施工した業者さんは土曜の仕事の作業予定がないと知っていたからである。だから先ほどの受け答えをした、なんとも悪い奴だ。十中八九土曜は出なくていいものだと考えていた。

 

僕が予想していたシナリオはこんな感じである。

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僕「もしもし、明日って出勤されますか?」

業者さん「明日?明日は休みだよ。」

僕「あーそうですよねー。実はこんな依頼があったんですけど無理に出勤してもらうわけにはいかないので相手方には調整をお願いしておきますねー。」

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今思い返してもやっぱり悪い奴だ。そんなこんなで業者さんへ電話をかける。

 

僕「もしもし、明日って出勤されますか?」」

業者さん「明日?土曜だよね?」

 

期待していた答えまではもうすぐ。しかし...

 

業者さん「明日書類作りで会社出る予定なんだよ。何かあった?」

僕「あ...あ…あの実はこういう依頼があってですね…」

業者さん「ちょうどよかった。やるよ。」

 

現場作業はなくても書類があったか…

土曜日の出勤が確定した。まずい、これはまずい…

土曜日はまずいんだ…楽しみにしていたことがあるんだ…!

 

その土曜日、2018年6月9日に行われる予定だったこと、それはAqoursの3rdライブ埼玉公演である。ずっと楽しみにしていたライブとのバッティングだ。

 

引き受けてしまった以上やらなければしょうがない。だがその試運転には不安材料があった。それはその数である。

 

部品を交換した装置は50台くらい。1台あたりは2・3分程度で終わるのだが幾分数がある。移動時間を含めると最低でも午前中いっぱいはかかってしまう。だがここまではいい。

 

しかし、万が一うまく動かないと原因を探ったり対応をしたりする必要がある。1台でも動かないとその対応にどれだけ時間がかかるかわからない。おそらく数時間はかかるだろう。そうなると当然ライブには間に合わない。

 

ライブに行ける確率を上げるには何ができるか…

そう思った僕は再度装置を見に行った。一度確認はしたが見落としがあったかもしれない…装置は特に問題はなさそうではあった。

次に記録を見直した…大丈夫そうだ。

不安を抱きながらもその日は帰宅した。

 

 

翌日、試運転が開始された。

業者さんと僕とお客さん、3人で動作を確認していく。

 

1台目がうまく動いた…2台目もうまく動いた…

しかし1台1台の動きがすごく遅く感じた。これを50回ほどやるのか…

汗はかくわ、服は汚れるわ、疲れるわ、そして何より時間が気になった。

 

50台中、半分ほどが試運転を終えたタイミングで休憩に入る。10時半ごろだっただろうか。

こっそりとtwitterを覗く。メットライフドームの写真がぞくぞくと目に入ってくる。はしゃぐオタクのツイート。なんで俺はこんな時に働いているんだ。でも自業自得。しかたない。

 

休憩おわり。

残りの装置を動かしていく。1台…そしてまた1台…ゆっくりながらもみんな確実に動いていく。そうだ、みんないい子だ…その調子だ…

 

そして最後の1台、装置が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お客さん「問題なしですね。試運転を終了しましょう。」

 

やった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

装置は規定の位置でしっかりと停止した。僕は思いっきりガッツポーズを2人に見せびらかした。何をやっているんだこの男は。

 

時刻は12時を少し回っていた。家に帰るまで歩いて30分、家からライブ会場までは2時間強、これで間に合う!

 

報告やら着替えやらを終えて、会社を出たのは12時半くらいだっただろうか。歩いて帰っても十分間に合う時間帯ではあったが、体力が消耗するとわかっていながらも走らずにはいられなかった。

その時、僕の頭に浮かんでいたのは学校へ向けて全力で走ったあの9人の少女たちの姿だった。

 

 

…まあ最初に適当な受け答えしなければ防げた話なんだけどね…